高校数学の数学1の命題と条件でもっとも重要な概念が必要条件と十分条件です。
必要条件と十分条件はどっちがどっちが忘れやすいので、苦手とする高校生も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、早稲田大学教育学部数学科を卒業した筆者が必要条件・十分条件とは何かについて解説した後、必要条件・十分条件の覚え方や問題を解くコツ、集合との関係などを解説します。
最後には必要条件・十分条件の練習問題も用意している充実の内容なので、ぜひ最後までお読みください。
必要条件・十分条件とは?わかりやすく解説
まずは必要条件・十分条件とは何かについてわかりやすく解説します。
命題p⇒qが真であるとき、qはpであるための必要条件、pはqであるための十分条件と言います。
※命題が何かわからない人は、命題とは何かについて解説した記事をご覧ください。
そして、p⇒qとq⇒pがともに真である、すなわち命題p⇔qが成り立つとき、pはq(qはp)であるための必要十分条件であると言います。
また、このとき、pとqは互いに同値であると言います。
必要条件・十分条件を判定するコツと覚え方・矢印の向き
ここからは、必要条件・十分条件の判定方法のコツを解説していきます。
命題「p⇒q」があったとき、
- p⇒qの真偽を調べる
- q⇒pの真偽を調べる
- p⇒qのみ真ならば、pはqであるための十分条件
- q⇒pのみ真ならば、pはqであるための必要条件
- p⇒qもq⇒pも両方真である(p⇔q)ならば、pはqであるための必要十分条件
という順番で必要条件・十分条件を判定していきます。
必要条件・十分条件の覚え方は「右は十分」と覚えておきましょう。
上記の手順3の通り、⇒(右向きの矢印。p⇒q)が真ならば十分条件です。よって「右は十分」と覚えておけば問題ありません。
言葉だけだとわかりにくいと思うので、具体例で考えてみましょう。
例えば、命題「x<1 ⇒ x≦1」について考えてみます。
※「<」と「≦」の違いがわからない人は不等号の意味や読み方について解説した記事をご覧ください。
まず、x<1 ⇒ x≦1は明らかに真ですね。
今度は逆を考えてみます。つまり、x≦1 ⇒ x<1は真か偽かを考えます。
x≦1はx=1でも問題ないので、x≦1 ⇒ x<1は偽となります。
よって、x<1はx≦1であるための十分条件ですが、必要条件ではありません。
必要条件・十分条件と集合、条件・命題の否定
条件p、qを満たすもの全体の集合をそれぞれP、Qとした場合、
- p⇒qが真 ⇔ P⊂Q ⇔ pはqの十分条件、qはpであるための必要条件
- p⇔qが真 ⇔ P=Q ⇔ pとqは互いに同値
となります。
※記号「⊂」の意味がわからない人は集合の記号一覧と読み方を解説した記事をご覧ください。
また、必要条件・十分条件の分野では条件の否定という事柄も学習しますので、一緒に覚えておきましょう。
「pかつq(P∩Q)」の否定は「pまたはq(P∪Q)」となります。
例えば、「x>0かつy≦0」の否定は「x≦0またはy>0」となります。
「pまたはq(P∪Q)」の否定は「pかつq(P∩Q)」となります。
例えば、「x≧2またはx<-5」の否定は「x<2かつx≧-5」となります。
「かつ」の「または」否定では「かつ」と「または」が入れ替わることを覚えておきましょう。
また、「すべて」と「ある」の否定もあります。
命題「すべてのxについてpである」の否定は「あるxについてpである」となります。
例えば、「すべての実数xについて、x>5である」の否定は「ある実数xについてx≦5である」となります。
※実数がわからない人は、実数とは何かについて解説した記事をご覧ください。
命題「あるxについてpである」の否定は「すべてのxについてpである」となります。
例えば、「ある素数xについて、xは奇数である」の否定は「すべての素数xについて、xは偶数である」となります。
※素数とは何かについて解説した記事もぜひ合わせてご覧ください。
ちなみにですが「すべての」の代わりに「任意の」という表現が使われるケースもありますので、こちらも覚えておきましょう。
必要条件・十分条件の練習問題
必要条件・十分条件の練習問題をご紹介します。
上記で解説した必要条件・十分条件の判定方法を意識しながら解いてみてください。
【練習問題1】
nを自然数、a、x、yを実数とする。以下の()に適するものを以下の選択肢ア〜エより選びなさい。
ア:必要条件であるが十分条件でない
イ:十分条件であるが必要条件でない
ウ:必要十分条件である
エ:必要条件でも十分条件でもない
(1)nが4の倍数であることは、n2が4の倍数であるための()
(2)a≠0であることは、ax-1=0が解をもつための()
(3)x、yが無理数であることはxyが無理数であるための()
【解答&解説】
(1)nが4の倍数であるとき、nは自然数kを用いてn=4kと表すことができます。
このとき、n2=16k2=4×4k2より、n2は4の倍数となります。
つまり、nが4の倍数⇒n2は4の倍数は真となります。
また、n=2のとき、n2=4で4の倍数になっていますが、nは4の倍数ではありません。
よって、n2は4の倍数⇒nは4の倍数は偽となります。
したがって、答えは「イ:十分条件であるが必要条件でない」となります。
(2)a≠0のとき、x=1/aとなるのでxは解をもつことになります。
よって、a≠0⇒ax-1=0は解をもつは真となります。
また、ax-1=0が解をもつためにはx=1/aより、a≠0となる必要があります(分母に0が来ることはありえません)
よって、ax-1=0は解をもつ⇒a≠0も真となるので、答えは「ウ:必要十分条件である」となります。
(3)x=√2、y=√2とすると、xy=2となり、有理数になるので
x、yが無理数⇒xyが無理数は偽となります。
※有理数と無理数がわからない人は、有理数について解説した記事をご覧ください。
また、x=√2、y=1とすると、xy=√2で無理数ですが、yは1で有理数です。
よって、xyが無理数⇒x、yが無理数も偽となります。
以上より、答えは「エ:必要条件でも十分条件でもない」となります。
【練習問題2】
以下の条件・命題の否定を述べなさい。
(1)x<3かつy>5
(2)x、yの少なくとも一方は5である
(3)すべての実数について、x2>0
(4)少なくとも1つの自然数nについて、n2+4n-8=0
(5)ある自然数a、bについて2a+3b=5
【解答&解説】
否定するには、「かつ」と「または」の入れ替え、「すべて」と「ある」の入れ替えが行われるのでした。
(1)x≧3またはy≦5
(2)「x、yの少なくとも一方は5である」ということは「x=5またはy=5である」ということなので、その否定は「x≠5かつy≠5」となります。
(3)ある実数について、x2≦0
(4)すべての自然数nについて、n2+4n-8≠0
(5)すべての自然数a、bについて2a+3b≠5
必要条件・十分条件は共通テストでも頻出
必要条件・十分条件は共通テスト(旧センター試験)でも頻出の分野となっているので、絶対に勉強・対策をしておきましょう。
最後に、2009年のセンター試験で出題された必要条件・十分条件に関する問題をご紹介します。
共通テストのレベル感が把握できると思うので、ぜひチャレンジしてみてください。
【問題(出典:2009年度センター試験)】
実数aに関する条件p、qを以下のように定める。
p:a2≧2a+8
q:a≦−2またはa≧4
以下の(ア)に当てはまるものを,以下の選択肢1~4のうちから1つ選びなさい。
qはpであるための(ア)
- 必要十分条件である
- 必要条件であるが,十分条件でない
- 十分条件であるが,必要条件でない
- 必要条件でも十分条件でもない
【解答&解説】
p:a2≧2a+8を解いてみましょう。
a2≧2a+8 ⇔ a2-2a-8≧ ⇔ (a+2)(a-4)≧0 ⇔ a≦-2、a≧4
より、「1.必要十分条件である」が答えとなります。
※今回は二次不等式が絡んだ必要十分条件をご紹介しましたが、数学1では二次不等式はまだ学習しません。二次不等式をまだ学習していない人は現段階では解けなくても大丈夫なのでご安心ください。
今回は数学1で登場する必要条件・十分条件について解説していきました。
ぜひ「右は十分」という覚え方で必要条件・十分条件を覚えていただければと思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました。