高校数学の数学Aにおける確率では積事象・和事象という用語が登場します。
積事象・和事象は確率の問題を解く上で非常に重要であり、内容をしっかりと理解しておかなければ確率の問題を解くのに苦戦してしまいます。
本記事では早稲田大学教育学部数学科を卒業した筆者が積事象・和事象とは何かについて、確率の例題を使いながら解説していきます。
数学・確率が苦手な人でも理解できるよう、わかりやすく解説していくので、ぜひ最後までお読みください。
積事象・和事象とは?
積事象・和事象とは何かについて解説する前に、まずは確率の基本的な性質をおさらいしておきます。
まず、どんな事象Aについても0≦P(A)≦1が成り立ちます。
※事象Aの起こる確率はP(A)で表すことができます。事象とは何かを理解できていない人は同様に確からしいとは何かについて解説した記事をご覧ください。
そして、空事象φの確率はP(φ)=0となり、全事象Uの確率はP(U)=1となります。
以上が確率の基本的な性質となります。
そして、全事象Uの部分集合A、Bについて
- 「AとBが同時に起こる」という事象をAとBの積事象
- 「AまたはBが起こる」という事象をAとBの和事象
といいます。
※部分集合がわからない人は集合(数学)の記号一覧について解説した記事をご覧ください。
積事象はA∩Bで表現され、和事象はA∪Bで表現されます。
積事象・和事象と排反事象
積事象・和事象の学習では排反事象という用語も登場します。
排反事象も積事象・和事象を理解する上で非常に重要な用語なので理解しておきましょう。
2つの事象A、Bが同時には起こらないとき、つまり、A∩B=φのとき「事象A、Bは互いに排反である」といいます。
事象A、Bが互いに排反であるとき、P(A∪B)=P(A)+P(B)となります(加法定理といいます)
3つ以上の事象については、その中のどの2つの事象も互いに排反であるとき、これらの事象は互いに排反となります。
3つ以上の事象A、B、C・・・が互いに排反であるとき、
P(A∪B∪C∪・・・)=P(A)+P(B)+P(C)+・・・
となります。
以上の言葉だけでの解説ではさすがに理解が難しいと思いますので、以下でご紹介する積事象・和事象の例題で深く学習していきましょう。
積事象・和事象の例題
では、実際に積事象・和事象に関する確率の例題を解いてみましょう。
【例題】
(1)コイン2枚を同時に投げて、1枚が表、もう1枚が裏となる確率を求めよ。
(2)箱の中に赤玉2個、青玉3個、白玉4個が入っている。この箱の中から3個の玉を同時に取り出すとき、3個の玉の色がすべて同じとなる確率を求めよ。
【解答&解説】
(1)コインを1枚投げて、表が出る確率は1/2ですね。コインを1枚投げて、裏が出る確率も1/2です。
今回はコインを2枚同時に投げて「1枚が表、もう1枚が裏となる」状態は同時に起こりますね。
よって求める確率は積事象より、1/2・1/2=1/4・・・(答)となります。
※コインに関する確率の計算について詳しく解説した記事もぜひ合わせてご覧ください。
(2)玉は全部で9個あるので、その中から3個を取り出す場合の総数は9C3=84[通り]ですね。
※Cの計算方法がわからない人は組み合わせCの計算と公式について解説した記事をご覧ください。
取り出した3個の玉がすべて同じ色となるのは、
[1]3個とも青
[2]3個とも白
のどちらかですね。
[1]の場合の総数=3C3=1[通り]、[2]の場合の総数=4C3=4[通り]です。
[1]と[2]は同時には起こらない(=事象[1]と事象[2]は排反である)ので、求める確率は和事象より、1/84+4/84=5/84・・・(答)となります。
以上が積事象・和事象に関する確率の基本問題となります。各事象が同時に起こるか起こらないかに注目しましょう。
積事象・和事象の練習問題
ここからは積事象・和事象の練習問題をいくつかご紹介します。
たくさんの確率の問題を解いて積事象・和事象に慣れていきましょう。
【練習問題】
(1)3個のサイコロを同時に投げるとき、出る目の最大値が4である確率を求めよ。
(2)赤玉6個と青玉3個が入っている箱Aと、赤玉4個と青玉5個が入っている箱Bがある。箱A、Bから同時に玉を1個ずつ取り出すとき、取り出した玉が2個とも赤玉である確率を求めよ。
(3)箱の中に1から10までの数字が書かれたカードが入っている。この箱の中から3枚のカードを同時に取り出すとき、以下2つの確率を求めよ。
- 最大の数字が7で、最小の数字が3以上である確率
- 最大の数字が7以下であるか、または、最小の数字が3以上である確率
【解答&解説】
(1)サイコロを3個投げるので、すべての目の出方=63=216通りです。
- 目の最大値が4以下であるという事象をA
- 目の最大値が3以下であるという事象をB
- 目の最大値が4であるという事象をC
とします。すると、A=B∪Cで、BとCは互いに排反なので、
P(A)=P(B)+P(C)となります。
よって、求める確率は
P(C)
=P(A)-P(B)
=43/216 – 33/216
=37/216・・・(答)
となります。
※サイコロの確率の計算・求め方について詳しく解説した記事もご用意しているので、ぜひご覧ください。
(2)箱Aにも箱Bにも合計9個の玉が入っていますね。
箱Aから玉を1個取り出して、赤玉を引く確率は6/9ですね・・・①
同様に考えて、箱Aから玉を1個取り出して、赤玉を引く確率は4/9です・・・②
今回は2つの箱から同時に玉を取り出すので、①と②は同時に起きます。
よって、求める確率は積事象より6/9・4/9=8/27・・・(答)となります。
(3)まずは最大の数字が7で、最小の数字が3以上である確率から求めます。
A=最大の数字が7以下、B=最小の数字が3以上とします。
求める確率は積事象P(A∩B)であり、3、4、5、6、7の5枚のカードから3枚を取り出す確率に等しいので、5C3 / 10C3=1/12・・・(答)となります。
次は最大の数字が7以下であるか、または、最小の数字が3以上である確率です。
P(A)=7C3/10C3、P(B)=8C3/10C3ですね。
また、P(A∩B)は先ほど求めた通り1/12です。
よって求める確率は
P(A∪B)
=P(A)+P(B)-P(A∩B)
=7C3/10C3 + 8C3/10C3 – 1/12
=27/40・・・(答)
となります。
今回は積事象・和事象とは何かについて解説した後、積事象・和事象の例題と練習問題を取り上げていきました。
積事象・和事象は大学入試や共通テストの確率の問題を解くための基礎的な知識となるので、必ず理解しておきましょう。