数学A(高校数学)の確率において、くじ引きを活用した問題は定番です。
共通テストでもくじ引きに関する確率や場合の数の問題が何度か出題されているので、対策は必須と言えます。
本記事では早稲田大学教育学部数学科を卒業した筆者がくじ引きと確率の計算のコツや必ず解いておきたいくじ引きに関する問題をいくつかご紹介します。
解答&解説も掲載しているので、数学や確率が苦手な人はぜひ参考にしてください。
くじ引きと確率の計算(もとに戻す・戻さない)
まずはくじ引きの確率に関する基本問題から解いていきましょう。
【問題】
(1)10本のくじの中にあたりが2本入っている。AとBの2人がこのくじをA・Bの順番で1本ずつ引くとき、Aが当たる確率とBが当たる確率を求めなさい。ただし、引いたくじはもとには戻さないものとする。
(2)10本のくじの中にあたりが2本入っている。AとBの2人がこのくじをA・Bの順番で1本ずつ引くとき、A・Bがともにあたりを引く確率を求めなさい。ただし、引いたくじはもとには戻さないものとする。
(3)10本のくじの中にあたりが2本入っている。AとBの2人がこのくじをA・Bの順番で1本ずつ引くとき、Aが当たる確率とBが当たる確率を求めなさい。ただし、引いたくじはもとに戻すものとする。
(4)10本のくじの中にあたりが2本入っている。AとBの2人がこのくじをA・Bの順番で1本ずつ引くとき、A・Bがともにあたりを引く確率を求めなさい。ただし、引いたくじはもとに戻すものとする。
【解答&解説】
くじ引きに関する確率の問題を解くコツですが、それは「くじの公平性」をしっかりと頭に入れておくことです。
くじの公平性とはくじ引きは何番目に引いても当たる確率は同じであるということです。
くじを引いた人がそのくじを戻す・戻さな関係なく、くじ引きは何番目に引いても当たる確率は同じです。
例えば、100本のくじがあってあたりが1本だけ入っているとします。そして、友達5人でこのくじを引くことを考えたとき、誰が何番目にくじを引こうが5人それぞれがあたりを引く確率は同じです。
早く引いた方があたりが出やすい・3番目に引いた方があたりが出やすいなどは一切ないわけですね。
「余り物には福がある」という有名なことわざがありますが、確率の話でいうと完全に嘘です。
以上を踏まえて、問題(1)〜(4)の解説をしていきます。
(1)まずはAが当たる確率から考えましょう。くじが10本あって2本があたりなので、Aが当たる確率は2/10=1/5・・・(答)ですね。
くじの公平性より、Aが当たる確率とBが当たる確率は同じなので、Bが当たる確率も1/5・・・(答)となります。
【Bが当たる確率の検算】
[1]Aがあたりを引くとき
Aがあたりを引く確率=1/5ですね。Bが当たる確率は9本のくじの中から1本のあたりを引く確率なので、1/9となります。
よって、AがあたりかつBが当たる確率は、1/5 × 1/9=1/45となります。
[2]Aがはずれを引くとき
Aがはずれを引く確率は10本のくじの中から8本のはずれを引く確率なので、8/10=4/5となります。
Bが当たる確率は9本のくじの中から2本のあたりを引く確率なので、2/9となります。
よって、AがはずれかつBが当たる確率は、4/5 ×2/9=8/45となります。
[1][2]より、Bがあたりを引く確率=1/45+8/45となり、確かに1/5であることが確認できます。
(2)Aがあたりを引く確率=2/10=1/5ですね。
Aがあたりを引くとくじは全部で9本になり、あたりは1本だけになります。Bはその状況であたりを引かなければなりません。
よってBがあたりを引く確率=1/9ですね。
以上より、1/5・1/9=1/45・・・(答)となります。
※(1)の[1]のケースです。
(3)Aがあたりを引く確率=2/10=1/5・・・(答)ですね。
今回は引いたくじをもとに戻しますが、くじの公平性で解説した通り、くじを引いた人がそのくじを戻す・戻さな関係なく、くじ引きは何番目に引いても当たる確率は同じです。
よってBが当たる確率もAと同じく1/5・・・(答)となります。
【Bが当たる確率の検算】
[1]Aがあたりを引くとき
Aがあたりを引く確率=1/5ですね。今回はくじを戻すので、Bが当たる確率は10本のくじの中から2本のあたりを引く確率となり、1/5となります。
よって、AがあたりかつBが当たる確率は、1/5 × 1/5=1/25となります。
[2]Aがはずれを引くとき
Aがはずれを引く確率は10本のくじの中から8本のはずれを引く確率なので、8/10=4/5となります。
Bが当たる確率は10本のくじの中から2本のあたりを引く確率なので、2/10=1/5となります。
よって、AがはずれかつBが当たる確率は、4/5 ×1/5=4/25となります。
[1][2]より、Bがあたりを引く確率=1/25+4/25となり、確かに1/5であることが確認できます。
(4)Aがあたりを引く確率=1/5、Bがあたりを引く確率=1/5なので、求める確率は1/5・1/5=1/25・・・(答)となります。
※(3)の[1]のケースです。
くじの公平性は非常に重要な概念ですので、必ず理解しておきましょう。
くじ引きと確率の計算でよくある間違い
10本のくじがあり、あたりが1本だけ入っているとします。引いたくじはもとに戻すものとします。
このとき、「10本中1本があたりだから、10回引けば1回は絶対当たるね」と言う人がいます。
確かにそれっぽく聞こえるのですが、間違いなのでご注意ください。
実際に計算をしてみましょう。
10回引いて少なくとも1回はあたりを引く確率を求めます。
余事象より、10回引いて少なくとも1回はあたりを引く確率=1-(10回全部はずれを引く確率)で計算することができますね。
※余事象とは何かについて解説した記事もぜひ合わせてご覧ください。
10回全部はずれを引く確率=(9/10)10なので、
10回引いて少なくとも1回はあたりを引く確率=1-(9/10)10≒0.651322
となります。%でいうとおよそ65%です。
100%とはかなり程遠い結果になりましたね。以上のくじ引きに関する確率は大人でも勘違いしている人が多いので、十分ご注意ください。
くじ引きと確率の計算(応用問題)
最後にくじ引きと確率の計算に関する応用問題をご紹介していきます。
ぜひチャレンジしてみてください。
【問題】
(1)15本のくじの中にあたりが何本か入っている。この中から同時に2本のくじを引くとき、1本があたり、1本がはずれる確率が12/25であるという。このとき、あたりくじとはずれくじはそれぞれ何本入っているか求めよ。
(2)n本のくじがあり、その中にあたりくじは3本入っている。このn本の中から2本を引くことを考える。ただし、n≧5とする。
このとき、少なくとも1本はあたりくじである確率が1/2以下となる最小のnを求めよ。
【解答&解説】
(1)あたりくじの本数=n本とします(n:整数)
すると、くじは15本あるので、1≦n≦15となりますね。
また、はずれくじの本数=15-n[本]となります。
15本のくじの中から2本を取り出す方法は15C2通りです。
あたり1本、はずれ1本を取り出す方法はnC1・15-nC1[通り]ですね。
よって、問題文の条件より
nC1・15-nC1 / 15C2=12/35
となるので、n(15-n)/15・7=12/35より、
n2-15n+36=0を導くことができます。
※Cの計算方法がわからない人は組み合わせCの計算と公式について解説した記事をご覧ください。
n2-15n+36を因数分解すると(n-3)(n-12)となるので、n=3、12となります。
※因数分解のやり方がわからない人は数学1の因数分解について解説した記事をご覧ください。
これは1≦n≦15を満たしているので問題ありません。
よって答えはあたりくじ=3本、はずれくじ12本またはあたりくじ=12本、はずれくじ3本となります。
(2)くじの引き方の総数はnC2通りですね。
少なくとも1本はあたりくじである確率をnを使って表すことを考えてみます。
2本ともはずれくじである引き方はn-3C2通りですね。
よって、少なくとも1本はあたりくじである確率
1-(n-3C2 / nC2)
=1-(n-3)(n-4)/n(n-1)
=6(n-2)/n(n-1)
となります(余事象)
すると、6(n-2)/n(n-1)≦1/2より、両辺に2n(n-1)をかけます。
すると、12(n-2)≦n(n-1)となりますね。
※n≧5より、n(n-1)≧0となるので不等号の向きは変わりません。
すなわち、n2-13n+24≧0となるので、
n≦(13-√73)/2、(13+√73)/2≦n・・・①となります。
※二次不等式の解き方がわからない人は二次不等式の解き方について解説した記事をご覧ください。
√73はおよそ8.5なので、√73=8.5とすると、
①はn≦(13-8.5)/2、(13+8.5)/2≦nより、n≦2.25、10.75≦nとなりますね。
n≧5なので、求める最小のn=11・・・(答)となります。
今回はくじ引きの確率と計算について解説していきました。
繰り返しにはなりますが、くじの公平性はくじの確率の問題を解く上で必須の知識なので必ず理解しておきましょう。