今回は倍数の判定法を取り上げます。倍数の判定法の例としては「ある自然数の一の位が偶数であれば、その自然数は2の倍数である」のようなものがあげられます。
本記事では、倍数の判定法を一覧にしました。また、なぜその判定法が成り立つのか?の証明も行っています。
2の倍数や4の倍数などの有名な判定法だけでなく、7の倍数や6の倍数などマイナーなものも網羅しているので、ぜひ最後までお読みください。
倍数の判定法一覧
倍数の判定法の一覧は以下の通りです。
2の倍数 | 一の位が偶数 |
3の倍数 | 各位の数の和が3の倍数 |
4の倍数 | 下2桁が4の倍数 |
5の倍数 | 一の位が0または5 |
6の倍数 | 2の倍数かつ3の倍数 |
7の倍数 | 一の位から左に3桁ごとに区切り、奇数番目の区画にある3桁以下の数の和と、偶数番目の区画にある3桁以下の数の和との差が7の倍数 |
8の倍数 | 下3桁が8の倍数 |
9の倍数 | 各位の数の和が9の倍数 |
10の倍数 | 一の位が0 |
11の倍数 | 奇数桁(1、3、5桁目・・・)の数を足し、そこから偶数桁(2、4、6桁目・・・)の数の合計を引いたものが11の倍数 |
12の倍数 | 3の倍数かつ4の倍数 |
25の倍数 | 下2桁が25の倍数 |
以下からは、各判定法の詳細とその判定法が成り立つ理由(証明)を行っていきます。
2の倍数の判定法とその証明
自然数Nの一の位が偶数(0、2、4、6、8のいずれか)であれば、Nは2の倍数となります。
例えば、N=458とするとNの一の位は8であり偶数なので、458は2の倍数となります。
※ここからの判定法の証明では4桁の数で考えますが、4桁でなくても同様の方法が使えます。
【証明】
千の位がa, 百の位がb, 十の位がc、一の位がdの数をabcdと表現し、これをNとします。
すると、N=1000a+100b+10c+dとなりますね。
N=1000a+100b+10c+d=2(500a+50a+10c)+dであり、
2(500a+50a+10c)は2の倍数ですね。よって、Nが2の倍数であるとき、dも2の倍数である必要があることがわかります。
dが2の倍数=一の位が偶数(0、2、4、6、8のいずれか)ということになります。
3の倍数・9の倍数の判定法とその証明
自然数Nの各位の数の和が3の倍数であればNは3の倍数となります。
例えば、153を考えてみます。各位の数の和=1+5+3=9であり、9は3の倍数なので153は3の倍数となります。
また、自然数Nの各位の数の和が9の倍数であればNは9の倍数となります。
例えば、2286を考えてみます。2+2+8+6=18で、18は9の倍数なので2286は9の倍数となります。
【証明】
N=1000a+100b+10c+d
=(999+1)a+(99+1)b+(9+1)c+d
=9(111a+11b+c)+(a+b+c)
となるので、(a+b+c)が3の倍数であればNは3の倍数となります。
(a+b+c)が9の倍数であればNは9の倍数となります。
4の倍数の判定法とその証明
下2桁が4の倍数であれば、その数は4の倍数となります。
例えば、540の下2桁の数=40で40は4の倍数なので、540は4の倍数となります。
【証明】
自然数Nの下2桁をaとすると、負ではないある整数kを用いて
N=100k+a=4・25k+aと表すことができますね。
したがって、Nが4の倍数であるのはaが4の倍数のときとなります。
5の倍数の判定法とその証明
一の位が0または5なら、その数は5の倍数となります。
例えば、945は一の位が5なので5の倍数となります。
【証明】
N=1000a+100b+10c+d
=5(200a+20b+2c)+d
なので、dが5の倍数であればNは5の倍数となります。
6の倍数の判定法とその証明
2の倍数かつ3の倍数であれば、その数は6の倍数となります。
2の倍数・3の倍数の判定法は上記でご紹介しているので、そちらを参照してください。
【証明】
6の倍数の判定法に関しては特に証明は不要となります。
一般に、pとqが互いに素であるとき、
nがpの倍数かつqの倍数 ⇔ nはabの倍数
が成り立ちます。これは証明なしに使って問題ありません。
※互いに素=共通の約数が1だけのこと。例えば5と9は共通の約数が1だけなので、互いに素といえます。
※記号「⇔」の意味がわからない人は命題と条件のコツについて解説した記事をご覧ください。
7の倍数の判定法とその証明
自然数Nの一の位から左に3桁ごとに区切り、奇数番目の区画にある3桁以下の数の和と、偶数番目の区画にある3桁以下の数の和との差が7の倍数であれば、Nは7の倍数となります。
例えば4578861を考えてみましょう。
4578861を一の位から左に3桁ごとに区切ると、4 | 578 | 861となりますね。
- 4=奇数番目(3番目)の区画
- 578=偶数番目(2番目)の区画
- 861=奇数番目(1番目)の区画
となります。
(4+861)-578=287で、287は7の倍数ですね。
したがって4578861も7の倍数となります。
【証明】
十億の位からa、b、c、d、e、f、g、h、i、j(a〜jは0〜9の自然数とする)である10桁の自然数Nを考えます。
そして、自然数Nを一の位から3ケタごとに以下のようにグループA〜Dに分けます。
すると、
- A=100h+10i+j
- B=100e+10f+g
- C=100b+10c+d
- D=a
となるので、N=1000000000D+1000000C+1000B+A・・・(※)と表すことができますね。
※を変形すると、
N=1000000001D+999999C+1001B−D+C−B+A
=1001(999001D+999C+B)+(−D+C−B+A)
=7・143・(999001D+999C+B)+(−D+C−B+A)
となるので、(−D+C−B+A)が7の倍数となればNも7の倍数となります。
8の倍数の判定法とその証明
下3桁が8の倍数であればその数は8の倍数となります。
例えば6560を考えてみましょう。下3桁は560であり、560は8の倍数なので6560は8の倍数となります。
【証明】
N=1000a+100b+10c+d
=8・125a+100b+10c+d
となるので、100b+10c+d(=下3桁)が8の倍数であればNは8の倍数となります。
10の倍数の判定法とその証明
一の位が0であれば、その数は10の倍数となります。
例えば、4530は一の位が0なので10の倍数となります。
【証明】
N=1000a+100b+10c+d
=10(100a+10b+c)+dより、dが0であればNは10で割り切れることがわかります。
11の倍数の判定法とその証明
奇数桁(1、3、5桁目・・・)の数を足し、そこから偶数桁(2、4、6桁目・・・)の数の合計を引いたものが11の倍数であれば、その数は11の倍数となります。
例として9377456を考えてみましょう。
奇数桁の数は一の位から順に6、4、7、9です。
偶数桁の数は十の位から順に5、7、3です。
(6+4+7+9)-(5+7+3)=26-15=11となり、11の倍数であることが確認できるので、9377456も11の倍数となります。
【証明】
一万の位からa、b、c、d、e(a〜eは0〜9の自然数とする)である5桁の自然数Nを考えます。
N=10000a+1000b+100c+10d+eであり、これを変形すると、
N=(9999a+a)+(1001b−b)+(99c+c)+(11d−d)+e
=9999a+1001b+99c+11d+a−b+c−d+e
=11(909a+91b+9c+d)+(a−b+c−d+e)
となるので、(a−b+c−d+e)が11の倍数となればNも11の倍数となります。
12の倍数の判定法とその証明
3の倍数かつ4の倍数であれば、その数は12の倍数となります。
※3の倍数と4の倍数の判定法は上記でご紹介しているので、そちらをご覧ください。
【証明】
証明ですが、こちらは6の倍数の判定法の証明と同様に、特に証明は不要となります。
6の倍数の判定法でも解説した通り、pとqが互いに素であるとき、
nがpの倍数かつqの倍数 ⇔ nはabの倍数
が成り立つからです。
25の倍数の判定法とその証明
いよいよ最後となります。下2桁が25の倍数であれば、その数は25の倍数となります。
例えば、43550の下2桁は50であり、50は25の倍数なので43550の倍数となります。
【証明】
自然数Nの下2桁が表す数をaとすると、Nは負ではない整数kを用いてN=100k+aと表すことができますね。
100k+a=25・4k+aより、100kは25の倍数であるから、自然数Nが25の倍数であるのは下2桁aが25の倍数のときとなります。
高校数学ではどの倍数の判定法を覚えるべきか
以上で様々な数の倍数の判定法をご紹介していきました。
しかし、高校数学では以上でご紹介したすべての判定法を覚える必要はないのでご安心ください。
大学入試・共通テストで必要なのは、
- 2の倍数
- 3の倍数
- 4の倍数
- 5の倍数
- 8の倍数
- 9の倍数
- 10の倍数
くらいです。他の7の倍数の判定法などは覚える必要はありません。
【補足】0は倍数か?という疑問
最後に「0は全ての数の倍数になるか?」という疑問を持つ人が多いので、この疑問に回答しておきます。
結論としてはなります。
例えば「20は4の倍数である」は明らかに真ですね。
これは20÷4=5となり、5が整数だからです。
つまり、「0は全ての数の倍数になるか?」を考えるときは、0÷(全ての数)の結果が整数になるかを考えれば良いのです。
0÷(全ての数)=0ですね。
※0÷(全ての数)は分数で0/全ての数となりますね。分数において分子=0のときはその分数は0となるのでした。分母=0の場合は計算不可となりますのでご注意ください。
0は整数なので「0は全ての数の倍数になる」と言えるわけです。
いかがでしたでしょうか?
今回は様々な数の倍数の判定法をご紹介しました。
7の倍数などマイナーな倍数の判定法もご紹介しましたが、上記でご紹介した大学入試・共通テストで必要な判定法だけ覚えれば十分なので、それらをぜひしっかりと覚えてください。