今回は数学Aで登場する独立な試行を取り上げます。
独立な試行は大学入試や共通テストで出題される確率の問題を解く上で必須の知識です。
しかし、確率が苦手な人の中にはそもそも独立な試行とは何かが理解できない、なぜ確率を求めるためにかける(掛け算をする)のかが理解できないという人もいるでしょう。
そこで本記事では早稲田大学教育学部数学科を卒業した筆者が独立な試行とは何かについて解説した後、確率の計算においてなぜかける(掛け算をする)のか?などについても例題でわかりやすく解説していきます。
独立な試行とは?
例えば、1個のサイコロを投げるという試行と1枚のコインを投げるという試行を考えてみましょう。
※試行=同じ状態のもとで繰り返すことができ、その結果が偶然によって決まる実験や観測のこと。
このとき、サイコロの目の出方とコインの表裏の出方は明らかに無関係ですね。
サイコロを投げて3が出たらコインは表が出やすくなるなどの現象はありえないわけです。
つまり、この2つの試行は互いにその結果に影響を及ぼさないということです。
このとき、これら2つの試行は独立であるといいます。
3つ以上の試行においても、どの試行の結果も残りの試行の結果に影響を及ぼさないとき、これらの試行は独立であるといいます。
そして、2つ以上の独立な試行を同時に行う、または続けて行うというように、これらの試行をまとめた試行を独立試行といいます。
独立な試行の公式
2つの独立な試行S、Tにおいて、Sでは事象Aが起こり、Tでは事象Bが起こるという事象をCとします。
このとき、事象Cが起こる確率P(C)=P(A)・P(B)となります。
※事象=試行の結果起こる事柄のこと。詳しくは同様に確からしいとは何かについて解説した記事をご覧ください。
2つ以上の独立な試行の場合においても考え方は同じです。
例えば、3つの独立な試行S、T、Uにおいて、Sでは事象Aが起こり、Tでは事象Bが起こり、Uでは事象Cが起こるとという事象をDとすると、
P(D)=P(A)・P(B)・P(C)となります。
独立な試行の例題&なぜかける?
以上の説明だけでは独立な試行のイメージがわかないと思うので、実際に例題を1つ解いてみましょう。
【例題】
サイコロを2回投げるとき、1回目は3以下の目、2回目は5以上の目が出る確率を求めよ。
【解答&解説】
サイコロを1回投げたとき、3以下の目が出る確率=3/6=1/2、5以上の目が出る確率=2/6=1/3ですね。
サイコロを投げる2回の試行は明らかに独立ですね(1回目に出た目が3以下だったら、2回目は4以上が出やすいなどはありえない)
よって求める確率は1/2・1/3=1/6・・・(答)となります。
※サイコロの確率の計算・求め方について詳しく解説した記事もご用意しているので、よろしければご覧ください。
独立な試行の確率では、なぜかける(掛け算を行う)のか?という疑問を持つ人もいるので例を使って簡単に解説しておきます。
例えば、100人に2つのゲームA・Bやらせることを考えてみましょう。
この2つのゲームは独立で、P(A)=0.1、P(B)=0.3という確率でクリアすることができるとします。
※100人がゲームAに挑戦したら100×0.1=10[人]がクリアでき、100人がゲームBに挑戦したら100×0.3=30[人]がクリアできるということです。
まずは100人全員にゲームAをやらせることを考えます。すると、100×0.1=10[人]がクリアしますね。
次はゲームAをクリアした10人に、ゲームBをやらせます。すると、10×0.3=3[人]がクリアしますね。
以上により、結果的に100人が3人にまで絞られました。3人=100×0.1×0.3[人]ですね。
これはまさに、2つの事象が起こる確率がP(A)・P(B)であることに対応しています。
独立な試行と反復試行
高校数学の教科書などでは独立な試行と一緒に反復試行という言葉がよく登場します。
反復試行とは簡単にいうと独立な試行の繰り返しのことです。
例としては「1枚のコインを続けて投げる」などがあげられます。
反復試行の確率はnCrPr(1-p)n-rで求めることができます。詳しくは反復試行とは何かについて解説した記事をご覧ください。
独立な試行に関する練習問題
最後に独立な試行に関する練習問題をご紹介します。ぜひチャレンジしてみてください。
【練習問題】
(1)A・B・Cの3人が1回の射的をやって的にあたる確率はそれぞれ1/2・1/2・1/3である。この3人がそれぞれ1回射的を行うとき、少なくとも1人が的に当てる確率を求めよ。
(2)箱Aには赤玉3個と白玉2個、箱Bには赤玉7個と白玉3個が入っている。箱Aから1個、箱Bから2個の玉を同時に取り出すとき、玉の色がすべて同じ色である確率を求めよ。
(3)箱Aには赤玉3個と白玉2個、箱Bには赤玉7個と白玉3個が入っている。箱Aに青玉を1個加える。箱Aから玉を1個取り出し、色を確認した後、もとに戻す。これを3回繰り返すとき、すべての色の玉が出る確率を求めよ。
【解答&解説】
(1)A・B・Cの3人が1回の射的をやる試行は独立です。
問題文に「少なくとも」という言葉があるので、余事象を使います。
少なくとも1人が的に当てる確率=1-(3人とも的に当たらない確率)ですね。
※余事象がわからない人は余事象とは何かについて解説した記事をご覧ください。
3人とも的に当たらない確率=(1-1/2)(1-1/2)(1-1/3)=1/6です。
よって求める確率は1-1/6=5/6・・・(答)となります。
(2)箱Aから玉を取り出す試行と箱Bから玉を取り出す試行は独立です。
[1]箱Aから赤玉1個、箱Bから赤玉2個を取り出す場合の確率
3/5・7C2/10C2=21/75
※Cの計算方法がわからない人は組み合わせCの計算と公式について解説した記事をご覧ください。
[2]箱Aから白玉1個、箱Bから白玉2個を取り出す場合の確率
2/5・3C2/10C2=2/75
[1]と[2]は互いに排反なので、求める確率は21/75+2/75=23/75・・・(答)となります。
※「互いに排反」の意味がわからない人は積事象・和事象とは何かについて解説した記事をご覧ください。
(3)3回の試行は独立です。玉を1個取り出すとき、赤玉、白玉、青玉が出る確率はそれぞれ3/6、2/6、1/6ですね。
3回玉を取り出すとき、赤玉、白玉、青玉が1個ずつ出る出方の総数は3P3[通り]であり、各場合は互いに排反なので、求める確率は3/6・2/6・1/6・3P3=1/6・・・(答)となります。
※Pの計算方法がわからない人は順列Pとは何かについて解説した記事をご覧ください。
今回は独立な試行とは何かについて解説した後、独立な試行の例題や練習問題を取り上げていきました。
繰り返しにはなりますが、大学入試や共通テストの確率の問題を解くにあたって独立な試行の知識は必須となります。ぜひ何回も復習して、頭の中に知識を定着させてください。