高校数学の仮説検定とは?コインの例題でわかりやすく解説!

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高校数学の教科書によっては数学1の「データの分析」で仮説検定が取り上げられます。

仮説検定では棄却や有意、有意水準など難しそうな言葉が登場するので苦手意識がある高校生も多いかもしれませんが、1つずつ丁寧に学習していけばしっかりと理解できるのでご安心ください。

本記事では早稲田大学教育学部数学科を卒業した筆者が高校数学の仮説検定とは何かについて、コインの例題でわかりやすく解説していきます。

数学が苦手な人もぜひ最後まで読んで、仮説検定を理解しましょう。

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仮説検定とは?コインの例題でわかりやすく解説

仮説検定とは、得られたデータをもとに母集団に対する仮説を立て、その仮説が本当に正しいかどうかを判断する方法のことです。

仮説検定の手順としては以下の3ステップとなります。

  • 正しいかどうか判断したい主張に対して、その主張に反する仮説を立てる。
  • 基準となる確率を設定し、1で立てた仮説のもとで、得られたデータがどの程度の確率で発生するかを求める。
  • 仮説が正しいかどうかをもとに、主張が正しいかどうかを判断する。

勘が鋭い人は、以上の文章を読んだだけで背理法に近いのでは?と思ったかもしれません。確かに、仮説検定は背理法に近い方法となります。

背理法とは何かについて解説して記事もぜひ合わせてご覧ください。

さすがに以上の解説だけだとわかりにくいと思うので、ここからはコインの例題を使って実際に仮説検定を行なってみましょう。

【例題】

コインを10回投げた結果、表が9回出た。このとき、このコインは表が出やすい仕様になっていることを仮説検定を用いて証明せよ。

【解答&解説】

コインを10回投げて表が9回出るのはかなり珍しい出来事ですね。

この事実だけを見ると「このコインは表が出やすいようにできている」という主張が考えられますが、この主張が正しいことを論理的に示すには、この主張に反する仮説を立てて、その仮説が疑わしいものであることを示すのです。

では、上記1〜3のステップに沿って仮説検定を行なっていきましょう。

1:「このコインは表が出やすい」という主張に反する仮説として「このコインは公正に作られている」という仮説を立てます。つまり、このコインにおいて表が出る確率=1/2ということになります。

2:基準となる確率を0.05と定めます(仮説検定においては基準となる確率は0.05や0.01と定めることが多いです)仮説「このコインの表の出る確率は1/2である」のもとで、コインを10回投げて9回以上表が出る確率はおよそ0.01となります。

※以上のおよそ0.01については数学Aの反復試行の確率を使って計算可能です。

3:この0.01は、基準となる0.05よりも小さいですね。この場合、仮説のもとで珍しいことが発生したと考えるのではなく、そもそも仮説自体が正しくなかったと考えます。したがって「このコインは表が出やすい仕様になっていた」が正しかったと判断します。

ちなみにですが、仮説が正しくないと判断することを「仮説を棄却する」と言います。

※逆に、求めた確率が基準として定めた0.05よりも大きい場合は、仮説が正しくなかったと言い切ることはできません。しかし、それがもとの主張が正しいことを意味するわけではないのでご注意ください。

これは背理法において、矛盾を導けなかったからといって、否定した命題が真であるとは限らないことに似ています(命題とは何かについて解説した記事もぜひ合わせてご覧ください)

コインの確率の計算について詳しく解説した記事もぜひ合わせてご覧ください。

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仮説検定の「基準」について(有意と有意水準)

先ほどのコインの例題で「基準となる確率」というのを定めましたが、これについて詳しく解説していきます。

先ほどのコインの例題においては、基準となる確率を0.05、つまり5%と定めて仮説検定を行いましたが、これは「ある事象が偶然発生したとは考えにくい」と判断する基準を0.05(=5%)と定めて考察を行うということを意味しています。

統計学においては、偶然発生したとは認めがたく、何らかの差があることを「有意である」といいます。そして、基準となる確率のことを有意水準といいます。

ただし、このコインが公正でないということは必ずしも正しいとは限らないので注意が必要です。

コインを10回投げて表が9回以上出る確率がおよそ0.01であるということは、コインを10回投げるという行為を1セットした場合、100セット行えばそのうち1セットは表が9回以上出るということです。

つまり、およそ0.01の非常に低い確率ではありますが、実はそのコインは公正なもので、表が9回出た場合をたまたま観測してしまったかもしれません(100セットのうちの1セット目がたまたま最初に来た)

以上のように、コインは実は公正なものだが、仮説「コインは公正である」を棄却して「コインは表が出やすい仕様になっている」と判断してしまう可能性もわずかではありますがあります。

これは仮説が正しいにもかかわらず、仮説を棄却してしまうという危険性が5%以内で発生しうるということを意味しています。以上から、基準となる確率のことを危険率と呼んだりもします。

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仮説検定の練習問題

最後に仮説検定の練習問題を1つご紹介しますので、ぜひチャレンジしてみてください。

【問題】

サイコロを7回投げたところ、1の目が4回出た。この結果から、このサイコロは1の目が出やすい仕様になっていると判断して良いか。仮説検定の考え方を使って以下の(1)(2)の場合について考察しなさい。

ただし、67=279936とする。

(1)基準となる確率を0.05とする。

(2)基準となる確率を0.01とする。

【解答&解説】

(1)「このサイコロは1の目が出やすい(仮説H1とする)」という判断をして良いかを考察するため、「このサイコロの1の目が出る確率は1/6である」という仮説H0を立てます。

ちなみにですが、仮説H0のことを帰無仮説、仮説H1のことを対立仮説といいます。

仮説H0のもとでサイコロを7回投げて、1の目が4回以上出る確率は

7C7・(1/6)7・(5/6)07C6・(1/6)6・(5/6)17C5・(1/6)5・(5/6)27C4・(1/6)4・(5/6)3

=(1+35+525+4375)/67

=4946/279936

=0.017…となりますね。

※Cの計算方法がわからない人は組み合わせCの計算と公式について解説した記事をご覧ください。

0.017は基準となる確率0.05よりも小さいので、仮説H0は正しくなかったと考えられ、仮説H1は正しいと判断可能です。

以上より、このサイコロは1の目が出やすい仕様になっていると判断して問題ありません。

(2)0.017は基準となる確率0.01よりも大きいので、仮説H0は否定できず、仮説H1が正しいとは判断できません。

以上より、このサイコロは1の目が出やすい仕様になっているとは判断できません。

サイコロの確率の計算について詳しく解説した記事もぜひ合わせてご覧ください。

今回は高校数学における仮説検定とは何かについてコインの例題を使いながら解説していきました。

仮説検定は背理法と似ているので、仮説検定があまり理解できない人はまずは背理法の学習からしっかりやっていくこともおすすめです。

本記事の執筆者
アツシ

早稲田大学教育学部数学科を卒業しており、数学に関して深い知見があります。大学生時代は家庭教師や塾講師のアルバイトで高校生に数学を教えていたため、数学をわかりやすく解説することには自信があります。

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