高校数学の数学Aにおける確率では条件付き確率という用語が登場しますが、条件付き確率が苦手な生徒は多いのではないでしょうか?
条件付き確率は理解するのが少し難しいジャンルですが、大学入試や共通テストで出題される確率の問題を解くためには必須の知識なので、必ず理解しておく必要があります。
そこで今回は早稲田大学教育学部数学科を卒業した筆者が条件付き確率の公式を例題でご紹介した後、条件付き確率の見分け方やベイズの定理などについても解説していきます。
最後には条件付き確率の練習問題も用意していますので、数学が苦手な人もぜひ最後までお読みください。
条件付き確率とは?公式の紹介
全事象をUとし、2つの事象AとBについて、事象Aが起こったときに事象Bが起こる確率のことを「事象Aが起こったときの事象Bの起こる条件付き確率」といい、PA(B)で表します。
※事象=試行の結果起こる事柄のこと。詳しくは同様に確からしいとは何かについて解説した記事をご覧ください。
PA(B)=P(A∩B)/P(A)
で求めることができます(ただし、P(A)≠0とする)これは条件付き確率の公式として覚えておきましょう。
※記号「∩」の意味がわからない人は集合(数学)の記号一覧と読み方について解説した記事をご覧ください。
また、上記の条件付き確率の公式を変形すると、
P(A∩B)=P(A)・PA(B)
となりますね。これは確率の乗法定理と呼ばれています。条件付き確率の公式と一緒に覚えておきましょう。
条件付き確率の例題と見分け方
以上の条件付き確率の解説だけではさすがに条件付き確率のイメージがわかないと思うので、ここでは条件付き確率の例題を2つご紹介します。
【例題1】
赤玉5個、白玉4個が入っている箱がある。この箱から玉を1個取り出し、それをもとに戻すことなくもう1個の玉を取り出す。このとき、1回目に赤玉が出て、2回も赤玉が出る確率を求めよ。
【解答&解説】
- 事象A=1回目に赤玉を取り出す
- 事象B=2回目に赤玉を取り出す
としましょう。このとき、P(A)=5/9ですね。
P(A∩B)=5P2 / 9P2 =5/18です。
※Pの計算方法がわからない人は順列Pとは何かについて解説した記事をご覧ください。
これは、取り出した玉を並べると考え、順列を利用して玉の取り出し方を計算しています。
P(A∩B)に関して、赤玉5個をR1、R2、R3、R4、R5とし、白玉4個をW1、W2、W3、W4と区別して考えることにより、並べ方の総数=9P2[通り]としています。
よって、求める確率PA(B)=P(A∩B) / P(A)=5/18 ÷ 5/9=1/2・・・(答)となります。
ちなみにですが、P(A∩B)は1回目と2回目に赤玉を取り出す確率のことです(確率の世界では同時確率といいます)
それに対してPA(B)は1回目に赤玉を取り出したという条件のもとで、2回目も赤玉を取り出す確率のことです。この場合、P(A)を事前確率、PA(B)を事後確率といいます。
以上を踏まえて、もう1問例題を解いてみましょう。
【例題2】
コイン2枚を同時に投げる。このとき、少なくとも1枚は表であるとき、2枚とも表となる確率を求めよ。
【解答&解説】
例題1の解答&解説を踏まえると、この問題では「少なくとも1枚は表である」という情報を確保している条件のもとで、2枚とも表であった確率(=条件付き確率)を求めなければなりません。
なので、答えを2枚とも表となる場合=1/4とするのは誤りです。これはP(B)=P(A∩B)に該当します。
今回は、
- 事象A=少なくとも1枚は表が出る
- 事象B=2枚とも表が出る
として問題を解いていきます。
P(A)=3/4、P(A∩B)=1/4なので、求める条件付き確率PA(B)=1/4 ÷ 3/4=1/3・・・(答)となります。
条件付き確率とベイズの定理
高校数学の教科書によっては、条件付き確率と一緒にベイズの定理を取り上げているものもあります。
ベイズの定理は共通テストでは直接的に出題されることはありませんが、難易度の高い大学の入試では出題されるケースもあるので、本記事でも取り上げておきます。
以下の例題を使って条件付き確率とベイズの定理について解説していきます。
【例題】
機械Aとそれ以外のいくつかの機械を使ってある部品を製造することを考える。不良品が含まれる確率は機械Aの場合は4%、それ以外の機械の場合は7%である。また、機械Aで製造するすべての部品のうちの60%を作る。この部品の中から1個の部品を取り出すことを考えるとき、以下の問いに答えよ。
(1)取り出した1個の部品が不良品である確率を求めよ。
(2)取り出した1個の部品が不良品であったとき、それが機械Aで作ったものである確率を求めよ。
【解答&解説】
(1)取り出した1個の部品が、機械Aで作られた部品である事象をA、不良品である事象をEとします。
すると、
- P(A)=60/100=3/5
- P(A)=1-3/5=2/5
- PA(E)=4/100
- PA(E)=7/100
ですね。
よって、求める確率P(E)=
P(A∩E)+P(A∩E)
=P(A)・PA(E)+P(A)・PA(E)
=3/5・4/100+2/5・7/100
=13/250・・・(答)
となります。
(2)求める確率はPE(A)なので、
PE(A)
=P(A∩E) / P(E)
=P(A)・PA(E) / P(E)
=3/125 ÷ 13/250
=6/13・・・(答)となります。
これは、不良品であったという結果が条件として付与され、「その不良品が機械Aによって作られたものかどうか」という原因の確率が問題になっています。
これを原因の確率という場合があります。また、(1)(2)より
PE(A)=P(A)PA(E)/ P(A)PA(E)+P(A)PA(E)
が成り立ちます。これをベイズの定理といいます。
条件付き確率の練習問題
最後に条件付き確率の練習問題をご用意しました。
ぜひチャレンジしてみてください。
【練習問題】
血液型がA型、B型である100人を調べた結果、男子64人、女子36人だった。
A型は男子40人、女子13人だった。このとき、以下の問いに答えよ。
(1)選ばれた1人が女子のとき、その人がA型である確率を求めよ。
(2)選ばれた1人がB型のとき、その人が男子である確率を求めよ。
【解答&解説】
(1)選ばれた1人が、血液型がA型であるという事象をA、女子であるという事象をBとします。
すると、求める確率はPB(A)となりますね。
P(A)=53/100、P(B)=36/100、P(A∩B)=13/100
なので、PB(A)=13/100 ÷ 36/100=13/36・・・(答)となります。
(2)求める確率はPA(B)となります。
P(A)=1-P(A)=1-53/100=47/100
B型の男子は64-40=24[人]なので、P(A∩B)=24/100
よって、PA(B)=P(A∩B)/P(A)=24/100 ÷ 47/100=24/47・・・(答)となります。
いかがでしたでしょうか?
今回は条件付き確率について解説していきました。条件付き確率は理解するのがなかなか難しい分野の1つですが、たくさんの問題を解いていくことで徐々に慣れていきます。
ぜひ数学の教科書や参考書・問題集などで数をこなすことを意識してみてください。