高校数学の数学1ではガウス記号の解説をしている教科書もあります。
ガウス記号は共通テストでは出題される可能性は低いですが、一般入試では出題される可能性はあります。
そこまで難しい分野ではないので、これを機に学習しておきましょう。
今回は早稲田大学教育学部数学科を卒業した筆者がガウス記号の定義について解説した後、ガウス記号のグラフの書き方などについてもわかりやすく解説します。
ガウス記号の定義・範囲
まずはガウス記号の定義について解説します。
実数xに対して、xを超えない最大の整数を[x]で表し、記号[ ]をガウス記号と言います。
※実数が何かわからない人は実数とは何かについて解説した記事をご覧ください。
例えば[2.8]を考えてみましょう。
以下の数直線の通り、2.8を超えない最大の整数は2なので、[2.8]=2となります。
では、[1/3]はどうでしょうか?1/3=0.333…となる循環小数ですね。
※循環小数がわからない人は循環小数とは何かについて解説した記事をご覧ください。
以下の数直線の通り、1/3=0.333…を超えない最大の整数は0なので、[1/3]=0となります。
ちなみに、[3]=3、[100]=100です。ガウス記号の中身が整数なら、その値は中身の整数のままとなります。
※先ほどガウス記号の定義について解説しましたが、例えば「aがxを超える」とは「aがxよりも大きい」ということです。よって、「aがxを超えない」とは「aがxと等しくなるのはOKだが、aがxよりも大きくなるのはNG」ということになります。
では、[-1.5]はどうでしょうか?
以下のように数直線上に-1.5をとると、-1.5を超えない最大の整数は-2なので[-1.5]=-2となります。[-1.5]=-1ではないのでご注意ください。
ガウス記号の中身がプラスの数字の場合は考えやすいですが、マイナスのときはご注意ください。
ガウス記号のグラフ
以上で解説したガウス記号の定義より、一般に以下が成り立ちます。
実数xに対して、nを整数として
n≦x<x+1ならば、[x]=n・・・①
[x]=nならば、n≦x<x+1・・・②
※記号「≦」と「<」の違いがわからない人は不等号の意味や読み方について解説した記事をご覧ください。
①を利用して、y=[x](-2≦x≦1)のグラフを考えてみましょう。
- -2≦x<-1のとき、y=-2
- -1≦x<0のとき、y=-1
- 0≦x<1のとき、y=0
- x=1のとき、y=1
となるので、グラフは以下のようになります。
グラフでは●と◯が利用されていますが、その違いがわからない人は一次不等式とは何かについて解説した記事をご覧ください。
ガウス記号で覚えておきたい性質
ガウス記号では上記①・②以外にも以下の性質があります。
実数x、整数nに対して[x+n]=[x]+nが成り立つ。
例えば、x=2.8、n=4とします。すると、[x+n]=[2.8+4]=[6.8]=6ですね。
また、[x]+n=[2.8]+4=2+4=6なので、[x+n]=[x]+nが成り立っていることが確認できます。
証明方法は以下となります。
[x]=aとすると、②よりa≦x<a+1なので、各辺にnを加えると、
a+n≦x+n<a+n+1となる。
①より、[x+a]=a+nとなるので、[x+n]=[x]+nが成り立つ(証明終)
ガウス記号は共通テストで出題される?
ガウス記号は共通テスト(旧センター試験)で出題されるの?という疑問を持っている高校生も多いのではないでしょうか?
結論としては冒頭でも述べた通り、ガウス記号が共通テストでは出題される可能性は極めて低いです。
筆者の記憶でも共通テストでガウス記号が出題されたことはないと思います。
なので、ガウス記号の学習・勉強の優先度は下げていただいて問題ありません。
しかし、共通テストではなく大学の一般入試の場合は出題される可能性はあります。実際に2018年の富山大学や2022年の慶應義塾大学の一般入試ではガウス記号が出題されています。
難易度の高い大学を狙っている学生や理系に進むことを検討している学生はガウス記号は必ず理解しておきましょう。
ガウス記号と極限
数学1A・2Bでは学習しませんが、ガウス記号と極限を組み合わせた問題が偏差値の高い大学入試では稀に登場することがありますので、簡単にだけご紹介しておきます。
例題として以下を解いてみます。
※数学3の極限を習っていない人は飛ばして問題ありません。
【例題】
limx→2+0 [x]とlimx→2-0 [x]の値を求めよ。
【解答&解説】
x→2+0より2<x<3なので、limx→2+0 [x]=2となります。
また、x→2-0より1<x<2なので、limx→2-0 [x]=1となります。
ガウス記号に関する練習問題
最後にガウス記号に関する練習問題をご紹介します。ぜひチャレンジしてみてください。
【練習問題1】
以下の値を求めよ。
(1)[5.8]
(2)[-√2]
(3)[9]
【解答&解説】
(1)5
(2)-√2=-1.41…なので、-2が答えとなります。
※√(ルート)がわからない人は平方根とは何かについて解説した記事をご覧ください。
(3)9
【練習問題2】
関数y=x-[x]のグラフを書きなさい。
【解答&解説】
- -1≦x<0のとき、[x]=-1より、y=x+1
- 0≦x<1のとき、[x]=0より、y=x
- 1≦x<2のとき、[x]=1より、y=x-1
- x=2のとき、[x]=2より、y=2-2=0
となるので、グラフは以下のようになる。
今回はガウス記号の定義や範囲、性質について解説していきました。
文系の人はガウス記号の学習優先度は高くないですが、学校によっては定期試験などでガウス記号を出題するところもあるので、ぜひ知っておきましょう!